競業避止義務

会社の商品、製造法、営業上のノウハウなどの秘密を知っている社員が、同業他社に引き抜きスカウトされる、 あるいは退職して同業種の別会社を設立するといったことになれば、その会社の受ける経営ダメージはとても大きいものになります。 在職中または退職した社員に、競業避止を義務付けることは可能なのでしょうか。

在職中の社員に対しては、労働契約に付随する信義則により特に別に用意をする必要もなく、競業につくことが禁止されています。 しかし、退職後の競業については、会社にとってどんな都合があるとしても、一方では退職した社員にも憲法で職業選択の自由が保障されていますので、 無制限に退職後の競業避止を義務付けることはできません。退職後の競業避止義務が有効となるためには、 1.製造や営業等秘密の中枢にいる社員が、2.その秘密が保護に値する適法なもののときに、3.個別の特約を締結する必要があり、 その特約には、1.制限の期間2.制限する地域3.制限する職種の範囲4.制限に対しての代償の支給の4要件が必要とされます。

退職した社員の競業を禁止するためには、就業規則に対象となる従業員の要件と合理的な上記4要件を定めた競業避止義務の条項を盛り込み、 競業避止義務の代償としての意味を持つ機密保持手当もしくは研究手当、役職手当などを支払うことが必要になります。 現在、役職手当などをすでに支払っている場合には、その手当の意味合いに、競業避止義務の代償であることを加えます。 また、個別に競業避止誓約書を取ることができればなお良いでしょう。

なお、競業避止義務にあわせて、これに違反した場合に退職金の全部または一部を支給しない、 支給済みの退職金の返還を請求できるといった事項を定めることもできますが、退職金の意味合い(給料の後払いなど)から考えると、 定めたところでもよほど重大な背信行為がない限りは認められないようです。

2009年4月


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